導入事例

VR技術で「火の学び」を実現 ~東邦ガス技術研究所 河原様・石神様インタビュー~ 

VR技術で「火の学び」を実現 ~東邦ガス技術研究所 河原様・石神様インタビュー~

東邦ガス株式会社

https://www.tohogas.co.jp/

公共・行政・自治体

教育全般

クライアント特化型

河原様

東邦ガス イノベーション推進本部 技術研究所 主幹研究員

河原 ゆう子様

石神様

東邦ガス 技術研究所 ライフ&ビジネスソリューションG

石神 稜大様

日常生活で「火」を安全に使うスキルは、これまで子どもたちが成長過程の中で自然に習得してきたスキルのひとつでした。しかし、家庭での実際の火を扱う機会や場面が減り、「火や火が触れたものは熱くなる」という原理原則が身についておらず、教育現場での実践における授業運営を難しくさせていることが顕在化してきました。こうした状況を解決するため、株式会社アルファコードが東邦ガス株式会社様の要望を受け制作したVR教材「火の学び火学VR®」は、子どもたちが楽しみながら火の扱い方を安全に学べる革新的なソリューションです。
このユニークな取り組みを牽引する河原様(主幹研究員)と石神様(ライフ&ビジネスソリューションG所属)に、プロジェクトの背景や成果について伺いました。
※「火学VR」は東邦ガス株式会社の登録商標です。

サマリー

・子どもたちが火の扱い方を安全に学ぶ機会が減少する課題に対応するため、「火学VR」を導入。
・調理工程をVRで体験することで、安全行動の定着やスキルの向上を目指す。
・教育現場や地域イベントで活用され、子どもたちの行動変容や家庭での学びにも大きな成果をもたらしている。

東邦ガス河原様・石神様

事業内容

まずは、東邦ガスの事業内容について教えてください。

河原様:「東邦ガスは、地域におけるゆるぎないエネルギー事業者として、持続可能な社会の実現をリードし、エネルギーの枠を超えたくらし・ビジネスのパートナーを目指して、ガス事業を中心に熱・電気供給事業等を展開する総合エネルギー事業者です。くらしやビジネスの現場を支える新しいサービスの提案にも力を入れています。」

石神様:「また、防災や教育など、地域社会やSDGsに貢献する取り組みも積極的に行っています。今回の『火学VR』もそのひとつです。」


ご担当者様のミッション

お二人のミッションについて教えてください。

河原様:「私は技術研究所の主幹研究員として、専門技術を活かした新商材やサービスに必要な技術の研究開発を担当しています。くらしを豊かにするための商品開発や、ビジネス分野でのお客さま向けのサービス開発に注力しています。」

石神様:「私は技術研究所のライフ&ビジネスソリューションGに所属し、GHP等の空調機器の技術開発や新規事業創出に向けた開発に取り組んでいます「火学VR」についても、普及に貢献していきたいと考えています。」


導入前の課題火の経験が減る現代

「火学」の必要性を感じたきっかけを教えてください。

河原様:「我々はお客さまに安全・安心なエネルギーを提供するエネルギー事業者として、CSR活動の一環で、子供たちがエネルギーや環境について考え、親しんでもらえるような活動を行っています。2010年頃から、火を使う機会が減少している現状に強い課題感を抱いていました。近年、調理家電や中食(なかしょく)の普及、共働き世帯の増加により、家庭で火を使う場面が減り、子どもたちがお手伝いをする機会も少なくなり、結果として、火を扱った経験のないまま成長した大人が増えてきています。」

石神様:「学校でも、火を使う調理実習が減っています。先生方は火を扱う教育の重要性を理解しているものの、調理実習では安全に管理された授業運営が求められるため、火をできるだけ使わない簡単なメニューが増えており、家庭のみならず学校でも火を使う場面が限られてきている状況です。」

河原様:「2016年に東邦ガスで実施したアンケート調査では、子どもの頃に火を扱った経験が多い人は、大人になっても火との接触機会が多いことが分かりました。また、火を怖がっている親の子は『火は怖い』という意識が伝わる傾向があり、火を避ける行動が世代間で引き継がれていることも明らかになりました。」

石神様:「こうした課題を解決するため、子どもたちに火の正しい扱い方を怖がらず楽しく学んでもらい、直火が必要になるであろう災害時でも自分で考えて行動できる力を育んでいったほうがいいと感じました。」


弊社へのご相談経緯

VRという手法にたどり着いた経緯を教えてください。

河原様:「私が研究所に異動したのが2017年で、ちょうどその頃VRが黎明期を迎えていました。何か新しいことを始めるために展示会などで技術探索を行う中、VRの可能性に気づきました。『オムレツを作る体験』をVRでできないかアルファコードさんに相談し、実際にVR技術を使ったデモを体験したとき、火を扱う楽しさや安全行動を学べる教材として非常に可能性を感じました。また、調理実習に必要な安全行動をシミュレーションできる点も大きな魅力でした。具体的なアイディアを提案いただき、それをベースにプロジェクトがスタートしました。」


VRソリューション導入の経緯

VR導入の際、どのような点を重視しましたか?

河原様:「子どもたちが楽しく学べること、火を使った失敗を恐れずに繰り返し体験できること、そして学びがスキルとして定着することが重要でした。また、VRは教員の授業運営の負担軽減にも役立つと考えました。火を扱う経験不足が原因による調理実習時の不安全な行動が少しでも減ることで、調理実習時の授業運営がしやすくなるのではないかと期待しました。」

石神様:「VRなら、火に触れる機会の少ない子どもたちが、安全に、そして繰り返し体験できるようになります。この点が、教材開発における重要なポイントとなりました。」


提供されたサービスの詳細(VR技術、システム開発等)

具体的にどのようなシステムを構築されたのでしょうか?

河原様:「VRゴーグルを装着して、CGのガスこんろと調理器具等を使った調理体験ができるシステムです。VR空間内で指示に従いながら調理を進めることで、火を扱う際の安全行動や調理手順を学びます。また、体験後には改善点がフィードバックされる仕組みも備えています。

※福岡教育大学附属福岡中学校での体験の様子(東邦ガス提供)

▲福岡教育大学附属福岡中学校での体験の様子(東邦ガス提供)

「火学VR」は、VR技術を活用して、ガスこんろを使った調理の手順を仮想空間内で体験しながら学ぶことができます。本コンテンツでは、実空間とVR空間が連動しており、子どもたちはVR空間内で案内に従いながら、ガスこんろや調理器具を操作し、オムレツ調理を進めていきます。体験を通じて、座学や映像学習では得られなかった実際の操作感覚や火への対応力が養われ、記憶に残る学習ができます。

さらに、調理を終えると、ゲームのように得点と判定結果が表示され、どこが良かったか、どこを改善するべきかがフィードバックされます。このようなインタラクティブな学びの場を提供することで、子どもたちは自分で考え、判断しながら自分のペースで進められる主体的な学習が可能になります。

結果表示画面

2つの調査実験から見えた効果

具体的に「火学VR」にはどのような効果がありましたか?

河原様:「金城学院大学との共同研究で2つの調査実験を実施しました。1つ目は、VR教材を調理実習前に体験したグループと体験していないグループの比較です。調理工程ごとに安全意識や行動を評価した結果、VR体験をしたグループの方が統計的に有意に高い得点を記録しました。

2つ目は、座学の後、VR体験をしたグループと映像教材を視聴したグループ、どちらも行わなかったグループを比較した調査です。経験値が少ない子どもたちの場合、映像視聴よりもVR体験をした方が、緊張感をもって加熱調理をしていることが分かりました。加熱調理中の緊張感は、すなわち調理に集中していることを意味し、火に対し慎重な行動をとれている証です。

VR体験をしてから調理実習に臨むことで子どもたちは加熱調理に集中して行動するという望ましい結果が得られました。」

子どもたちの行動変容

実際に体験した子どもたちの反応はいかがでしたか?

石神様:「火学VRをご利用いただいた先生からは、VR体験後、『家でオムレツを作ってみた』と報告してくれた生徒がいた、VR体験後4カ月が経過していても、かつては見たことがない調理実習時に火を見ながら着火・火加減調整・消火をするといった安全行動を自主的に取る子どもが増え、たいへん驚いたという報告をいただきました。」

河原様:「学校の授業に一体感がでて活性化しただけでなく、家庭での能動的な行動にもつながり、火の大切さや扱い方をより深く学んでもらえたことが大きな成果です。」


現在の利活用

現在、このVR教材はどのように活用されていますか?

河原様:「学校での活用にとどまらず、自治体の環境イベントなど、さまざまな場面で活用されています。また、自治体と連携し、環境を考え、火を扱う学習コンテンツとして提供するケースが増えています。

イベント会場では、子どもたちが真剣に取り組む姿や、何度も挑戦したいという意欲的な反応、それを見まもる保護者の応援の様子が見られています。非常に反響が大きいサービスになっています。」

石神様:「当社の技術研究所の展示施設では、授業の一環で見学に来た高校生の反応も良好です。「火学VR」は小中学生をターゲットにしていますが、義務教育を終えた年齢層にも受け入れられる内容であると感じています。」


今後の展望

今後、この取り組みをどのように展開していきたいとお考えですか?

河原様:「今後は、家庭や地域でも気軽に体験できる仕組みを作り、様々な機会を通じて火の正しい扱い方を広め、家庭での加熱料理のお手伝いの実践に繋げていきたいです。」

石神様:「学校だけでなく、地域や自治体との連携を強化し、多くの子どもたちが火について学べる機会を提供していきたいと考えています。」

東邦ガス株式会社

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教育全般

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河原様

東邦ガス イノベーション推進本部 技術研究所 主幹研究員

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東邦ガス 技術研究所 ライフ&ビジネスソリューションG

石神 稜大様

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