導入事例

VRを活用した安全教育の挑戦 ~新明和工業 特装車事業部インタビュー~

新明和工業 特装車事業部の取り組み

特装車事業部

https://www.shinmaywa.co.jp/

製造業

安全教育

クライアント特化型

佐野工場浅野様

佐野工場 製造部 製造課 製缶係

浅野 佑介様

広島工場 製造部 製造課 組立3係

楠 太希様

寒川工場西村様

寒川工場 製造部 製造課 成型係

西村 嘉紘様

新明和工業は、航空機、特装車、パーキングシステムなど多岐にわたる事業を展開するメーカーです。従来から、安全教育には力を入れており、上長や先輩による直接指導やビデオ教材を活用した研修を実施してきました。しかし、危険を直感的に体感し、安全意識をより深く定着させるための新たな手法が求められていました。
そこで同社は、VR(仮想現実)技術を活用した安全教育の導入を決定。本プロジェクトは、総務部総務課を中心に、各工場の担当者を含めた6名のプロジェクト推進者によって進められました。今回は、推進メンバーに導入の狙いを、作業員・管理者に現場での変化を伺いました。

サマリー

・新明和工業の特装車事業部では、VRを活用した安全教育を導入。
・単なる映像視聴ではなく、危険を疑似体験することで、安全意識の向上を図る。
・作業員の意識変容や現場での行動改善につながる成果が現れ始めている。

導入前の課題と経緯

新明和工業の安全教育の取り組みについて教えてください。

総務部 総務課・島田幸夫様
「当社はダンプトラックや塵芥車(じんかいしゃ/ごみ収集車のこと)等を製造しており、工場内では大型機械や重量物を扱う作業が多く、安全教育に長年取り組んできました。特装車事業部では、各工場で上長や先輩が直接指導を行い、安全意識を徹底する教育体制を築いてきました。

これまで、十数種類の業務内容に対する安全教育ビデオを制作し、社内研修で活用してきました。しかし、映像を見るだけでは実感が湧きにくく、危険の本質を深く理解するには限界があると感じていました。そこで、「実際に事故の瞬間を体験することで、より深い学びが得られるのではないか」と考え、VRの導入を検討し始めました。」

VR導入を検討する中で、市販のVRも試されたそうですね?

「はい。まず広島工場で、市販のVRコンテンツを試しました。例えば、高層ビルの渡り廊下を歩くVRでは、足がすくむ感覚を体験できました。ただ、これらは臨場感はあるものの、特装車事業部の作業環境とは異なり、私たちが直面する事故とは直接結びつかない内容でした。 そのため、より現場に即したVRコンテンツの制作が必要だと考えました。」

そこで、タダノ社のVR事例を参考にしたのですね?

「はい。同じく建設・特装車業界のタダノ社がVRを活用した安全教育に取り組んでいると伺い、ベンチマークとして情報を収集しました。

タダノ社では、クレーン作業車での危険体験をVRで再現し、作業員の安全意識向上を図る取り組みを行っておられました。そのコンテンツは、事故のリスクを視覚的に伝えるだけでなく、短時間で直感的に理解できる構成になっており、「これは効果的だ」と確信しました。

その後、タダノ社からアルファコードさんの紹介を受け、VRコンテンツ制作の具体的な計画を進めることになりました。プロジェクトを進める中で、現場の作業者からも「より実際の業務に即したコンテンツを作りたい」という声が上がりました。

佐野工場担当者(プロジェクト推進者)の想い
「せっかく自社に合ったVR動画を作るのであれば、少しでもリアルに、実際に作業しているような体験ができるものにしたいと考えました。
既製品のVRを実際に視聴した方々からも、これまでの動画とは異なり、よりリアルで良かったという意見をいただきましたが、『もっと実際の作業に近づけることはできないか』という声もありました。よりリアルなVR動画を制作できれば、安全意識が一層高まり、抑止力につながると考えています。」

広島工場担当者(プロジェクト推進者)の想い
「まずVRを扱う業者を調べ、複数の会社に訪問し、さまざまなVRを体験しました。
しかし、既製のVRコンテンツは実際の作業環境とかけ離れており、共感しづらいという意見が多かったため、オリジナルコンテンツの制作を決断しました。
そこに至るまでには多くの時間と労力がかかりましたが、最も大変だったのは制作の過程でした。会社の予算を使う以上、実際に意味のあるものを作らなければなりません。
安全教育として導入した今も、賛否両論さまざまな意見がありますが、最終的には現場の作業員にとって本当に役立つものを作り上げていきたいと考えています。」

どのようなVRコンテンツを制作したのですか?

島田様

「過去の災害データを分析し、発生頻度の高い事例に基づいて、3つのVRコンテンツを制作しました。

落下編(高所作業での落下体験)
切れ・こすれ編(グラインダー作業時の危険体験)
挟まれ編(ダンプトラックの荷台を下げる際の危険体験)

落下編 切れ・こすれ編 挟まれ編
制作した3種のコンテンツ

これらをVRで再現し、作業員が「映像を見る」のではなく、「事故の瞬間を自分が体験する」ことで、危険をリアルに感じ取れるようにしました。」

導入後の反応

ここからは実際に工場現場でVRコンテンツを体験された皆様にお話を伺いました。

はじめに、業務内容について教えてください。

佐野工場 製造課 製缶係・浅野 佑介様
「私の業務は、ダンプトラックやコンテナのフレームや外装を溶接し、組み立てる作業が中心です。 大型の金属部品を扱うため、クレーンを使った吊り上げ作業や、ガスバーナーを用いた加工が日常的に発生します。 また、仕上げ工程ではグラインダーを使って溶接部の研磨作業を行うことも多く、火花が飛び散る環境での作業が欠かせません。」

佐野工場浅野様

広島工場 製造課 組立3係・楠 太希様
「私は、ごみ収集車の組立作業を担当しています。 特に、20立方メートルの大型車両を、搬入から最終仕上げまで一貫して製造する工程に携わっています。」

寒川工場 製造課 成型係・西村 嘉紘様
「私はプレス機を用いた部品の成型を担当しています。 大型の金属部品を切り出し、曲げ、形を整える作業が中心ですが、仕上げの工程ではサンダー(グラインダー)を使って研磨作業を行う機会も多くあります。」

寒川工場西村様

導入後の反応

今回のVRでは、高所での作業、グラインダーを使った作業、ダンプトラックの荷台を上げ下げをする作業など、皆様の作業現場で起こり得る危険体験をしましたが、VR体験を通じて、作業に対する意識は変わりましたか?

佐野工場 製造課 製缶係・浅野様
「ダンプアップ(荷台を上げる)した状態での作業では、荷台を支えるストッパーの確実な設置が不可欠です。しかし、『短時間なら(ストッパーを入れなくても)大丈夫かな』という油断が生じることもありました。
VRで荷台が下がる際の危険性を体験し、そのリスクを身をもって理解しました。それ以来、現場で「ストッパーを入れたか?」と確認する声が増えました。」

広島工場 製造課組立3係・楠様
「ごみ収集車の組立作業では、高所作業が多く、安全帯の装着が基本です。しかし、作業のしやすさを優先して「少しの間なら装着しなくても大丈夫かな」と思ってしまうことがありました。
VRで落下の瞬間を体験して以来、『ここでバランスを崩したらどうなるか?』と危険を察知する習慣が身につきました。

寒川工場 製造課 成型係・西村様
「VR内で自分の手が切れてしまうシーンでは思わず声が出ました。
寒川工場のグラインダー作業場は騒音が大きく、作業員は耳栓を着用しています。そのため、声をかけても相手が気づかず、事故につながるリスクがあります。この危険性を実感し、作業員同士でジェスチャーを使った確認を徹底するようになりました。」

 その他にも今回のVR体験の効果を感じたところはおありでしょうか?

寒川工場・西村様
「はい、間接部門の教育にも有効だと思いました。
間接部門の担当者は、配属前に1カ月ほど現場実習を行いますが、実際の作業には関わらないため、事故のリスクを具体的に体験する機会がありません。
例えば、クレーンの導線上にいることの危険性や、グラインダー作業中に不用意に近づくリスクなどをVRで体験できれば、安全意識を高めるのに有効だと考えています。」

管理者の皆様にお伺いします。VRを体験して、現場の意識変容はどう見ていますか?

広島工場 管理者・宮永様
「広島工場では、ごみ収集車の組立や製缶作業でサンダー(グラインダー)を使う機会が多く、作業員には『しっかり固定して使うように』と指導してきました。
VRで事故の瞬間を体験すると、固定しなかった場合の危険がリアルに伝わり、作業員の意識が変わったと感じます。
また、VRの映像が実際の工場で撮影されたため、作業員にとって馴染みのある環境で体験できたことも効果的でした。知っている人が登場することで、より現実感が増し、「自分ごと」として受け入れやすかったのではないかと思います。」

寒川工場 管理者・高松様
「これまでもサンダーは「両手で持って固定して」と再三注意してやっていましたが、その理屈と体験が合致したと感じています。なぜ固定しなければいけないのか、体験を通じて腹落ちすることができたと思います。」

今後の展望

再び、総務部総務課・島田様に伺います。

VRによって、どのような変化を目指していますか?

総務部 総務課・島田様
「VRを活用することで、これまでの安全指導がより実感を伴うものになり、安全意識の定着につながることを期待しています。
例えば、
・グラインダー作業では片手で持つ人がいなくなる
・作業場でメガネをかけていない人がいなくなる
・高所作業では安全帯をしっかり装着する
こうした変化が現場で目に見えるようになれば、VR教育の成果が現れたと言えるでしょう。その結果として、事故の発生件数にも変化が出てくることを期待しています。
作業員の皆さんが「言われたからやる」ではなく、「自分自身が危険を体験したからやる」 という意識を持てるようになれば、安全な職場づくりに大きく貢献できると考えています。」

特装車事業部

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佐野工場浅野様

佐野工場 製造部 製造課 製缶係

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広島工場 製造部 製造課 組立3係

楠 太希様

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